【体験談】副業から始めるポートフォリオキャリア:会社員エンジニアが新しい働き方を実現したステップ
現在のキャリアに成長の停滞を感じ、新たな働き方としてポートフォリオキャリアに関心を持つITエンジニアは少なくありません。しかし、具体的にどう始めれば良いのか、どのような道筋をたどるのかが見えず、不安を抱えている方もいらっしゃるでしょう。
本記事では、会社員として働きながら副業を通じてポートフォリオキャリアの第一歩を踏み出し、新しい働き方を実現された方(ここではAさんとします)の体験談を基に、副業から始めるポートフォリオキャリア構築の具体的なステップとそこから得られるものについて掘り下げていきます。
ポートフォリオキャリアを目指したきっかけと副業という選択
Aさんは、システム開発会社で5年間エンジニアとして勤務されていました。担当するプロジェクトは安定していましたが、徐々に技術的な挑戦機会や自身のスキルが社外で通用するのかという点に疑問を感じ始めていたそうです。「このまま一つの会社に依存した働き方で良いのだろうか」「もっと多様な経験を積みたい」という思いから、複数の専門性を持ち、プロジェクトごとに柔軟に関わるポートフォリオキャリアに関心を持つようになりました。
いきなり独立するのはリスクが高いと感じていたAさんは、まずは現職を続けながら自身の市場価値を高める方法として副業を選ばれました。副業であれば、収入を維持しつつ、異なる分野の仕事に挑戦したり、新しい技術を習得したりすることが可能です。これが、ポートフォリオキャリアの構築に向けた現実的な第一歩になると考えたのです。
最初の副業案件獲得と両立の壁
Aさんが最初に取り組んだ副業は、知人の紹介による小規模なWebサイト開発でした。自身の得意な技術スタック(ここではJavaとSpring Boot)が活かせる案件を選び、平日の夜や週末を中心に作業時間を確保しました。
副業を始めた当初、最も大きな壁となったのは時間管理です。本業の業務に加え、副業のタスクをこなすためには、これまで以上に計画的に時間を使う必要がありました。また、未知の技術や、クライアントとのコミュニケーションにおける難しさにも直面したといいます。会社員としての業務とは異なる、個人としての責任の重さを痛感する場面もあったそうです。
これらの課題に対し、Aさんは以下のような工夫をされました。
- タスクの優先順位付け: 本業と副業のタスクをリストアップし、重要度や緊急度に応じて優先順位をつけ、無理のないスケジュールを作成しました。
- 集中できる時間の確保: 短時間でも良いので、スマートフォンを遠ざけるなど、集中できる環境を意図的に作り出しました。
- クライアントとの密な連携: 進捗状況をこまめに報告し、疑問点や不明点はすぐに確認することで、手戻りや認識のずれを防ぎました。
- 休息の重要性: 無理な詰め込みは避け、休息日を設けることで心身のバランスを保ちました。
副業で得られた「ポートフォリオの種」
いくつかの副業案件を経験する中で、Aさんは技術力はもちろんのこと、以下のような様々なスキルや経験を得られたと語っています。
- 新しい技術スタックの習得: 本業では使う機会のなかったフロントエンド技術(React)やクラウドサービス(AWSの一部サービス)を副業で実践的に使用し、習得しました。
- 要件定義・設計スキル: クライアントの要望をヒアリングし、技術的な仕様に落とし込むプロセスを通じて、上流工程のスキルが向上しました。
- プロジェクトマネジメント: 小規模ながらも、一人でプロジェクト全体を管理する経験を積みました。
- コミュニケーション能力: 技術者ではないクライアントに対し、専門用語を避けながら分かりやすく説明する力が身につきました。
- 実績としてのポートフォリオ: 完成したWebサイトや開発した機能は、具体的な実績として自身のポートフォリオに加えられるようになりました。
これらの経験は、単に収入を増やすだけでなく、Aさん自身の市場価値を高め、キャリアの選択肢を広げる貴重な「ポートフォリオの種」となりました。特に、本業では経験できなかった領域に挑戦できたことが、自身の可能性を広げる上で大きかったといいます。
副業を通じてポートフォリオキャリアを構築するためのステップ
Aさんの体験談を踏まえ、副業からポートフォリオキャリアを構築するための具体的なステップを整理します。
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目標設定:
- なぜ副業を始めるのか、副業を通じてどのようなスキルや経験を得たいのか、将来的にどのようなキャリアを目指すのかを明確にします。
- 例:「現在のバックエンドスキルに加え、副業でフロントエンド開発の経験を積み、フルスタックエンジニアとしての実績を作る」「特定の業界(例:教育系)のシステム開発に関わり、専門性を深める」など、具体的な目標を設定することが重要です。
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スキル棚卸しと不足スキルの特定:
- これまでの経験で培った技術スキル、ビジネススキル、ヒューマンスキルなどを洗い出します。
- 目標達成のために不足しているスキルを特定し、副業で補うべき領域を検討します。
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案件探し:
- クラウドソーシングサイト、副業・フリーランス向けエージェント、知人・コミュニティからの紹介など、様々なチャネルを活用して案件を探します。
- 自身のスキルや目標に合った案件を選ぶことが重要です。単価だけでなく、どのような経験が得られるか、ポートフォリオにどのように活かせるかという視点も持ちましょう。
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案件選択の基準:
- 報酬はもちろん重要ですが、それ以上に「目標達成に資するか」「新しい学びがあるか」「実績として示しやすいか」といった点を重視します。
- 最初は小さな案件から始めて、徐々に実績と自信をつけていくのも良い方法です。
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契約とコミュニケーション:
- 契約内容(作業範囲、納期、報酬、支払い条件など)をしっかりと確認し、不明点は解消しておきます。
- クライアントとは密にコミュニケーションを取り、報連相(報告・連絡・相談)を徹底することで、信頼関係を築き、プロジェクトを円滑に進めます。
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成果物の整理と公開:
- 副業で得られた成果物(開発したアプリケーション、参加したプロジェクトの説明など)を整理し、自身のスキルや実績を効果的に伝えられるポートフォリオとしてまとめます。
- 可能な範囲で公開し、実績としてアピールできるように準備します。コード規約やドキュメンテーションなど、品質にもこだわりましょう。
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継続的な学習と関係構築:
- 副業で得られた経験を振り返り、次に活かします。新しい技術や知識の学習も継続的に行います。
- クライアントや共に働く人々との良好な関係を維持し、次の機会に繋げられるように努めます。
まとめ:副業は未来のキャリアへの投資
Aさんの事例のように、副業は会社員エンジニアがポートフォリオキャリアを構築するための非常に有効な手段となり得ます。現在の安定した環境を維持しながら、自身の興味や関心のある分野に挑戦し、多様な経験を積むことができます。
副業で得られるのは、単なる追加収入だけではありません。新しいスキル、異なる視点、人脈、そして何よりも「自分にはこんなこともできる」という自信です。これらはすべて、将来どのような環境でも活躍できる、しなやかで変化に強いキャリアを築くための貴重な財産となります。
もちろん、副業と本業の両立は容易ではありませんし、様々な困難に直面することもあるでしょう。しかし、計画的に取り組み、学び続ける姿勢を持ち、失敗を恐れずに挑戦を続けることで、着実に自身のポートフォリオを充実させていくことが可能です。
もし現在のキャリアに行き詰まりを感じているのであれば、副業を通じて新しい扉を開いてみることを検討されてはいかがでしょうか。それは、未来の自身のキャリアに対する、価値ある投資となるはずです。